トムは真夜中の庭で   (1958年)

著者:フィリッパ・ピアス(イギリス 1920−)


この本は児童書に入れるべきかもしれないという気もするが、取り返せない時間をたくさん持っている人にほど、響くものが大きいと思う・・・
所詮、児童書、青春物、大人の本、などという分類は、意味がないものかもしれない。

少年トムと不思議な少女ハティのちょっと切ない出会いの話。というと、恋愛小説かと思うと、そうではない。時空を超えた、SFかミステリーのような風変わりで魅力的な話。

イギリスの風景が目の前に広がるような、自然描写も心に残る。

どこかで、三次元の世界と四次元の世界がクロスする。それも一度や二度ならず・・・ トムと一緒に、早く早くと待ちながら読み進んでしまう。

思わずのめり込んで胸を熱くし、涙が流れるのが止まらず、またそれが快感になるような不思議な魅力を持つ話だ。
話の一部を借りて、この素晴らしい世界へお誘いしてみよう。



「・・・ぼくは、リップ・ヴァン・ウィンクルを
さかさまにしたような もんじゃないだろうか、とトムは思った。
リップ・ヴァン・ウィンクルは20年もさきへいってしまったが、
ぼくはハティが生きていた100年以上もむかしの時代に
逆戻りをしているんだから。
しかし、毎晩、いつでもおなじ{時間}へ
逆戻りするわけではなかった・・・」

(高杉 一郎氏の訳による)




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