嵐が丘   (1847年)

著者:エミリー・ジェイン・ブロンテ (イギリス 1818−1848)


ヨークシャーの自然、ヒース(エリカ)が風にざわめく荒地を舞台にしたロマンスという印象を持っている人が多いと思う。だが、別の見方をすると、全く反人間主義艇的な、一貫した復讐劇とも読める。

ところが、そんな反道徳的な主人公ヒースクリフの言動に、否応なく引き込まれていくのはなぜだろう。それが人間の心にひそむ、真実の姿を描いているからだろうか。

愛する人まで、憎悪して死に至らしめ、自分の子どもや愛する人の子どもを復讐の道具にする。しかし、一方、恋人キャサリンの墓場で、究極の愛の言葉を吐くヒースクリフの姿には、その残酷さとは裏腹に胸を打つものを感じる。 一番好きな場面が、この一番残酷とも思える場面なのだ。

そしてこの壮大なドラマの背後にあるのが、見事に描かれている自然の情景だ。背の低いヒースが風になびいているだけの、なだらかな丘陵地帯。なんとなく殺風景な自然の中に秘められた、人間の情念のすさまじさが対照的である。

何度読み返しても、素の旅に新しい驚きを感じる不思議な本である。



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