狭き門   (1909年)

著者:アンドレ・ジィド (フランス 1869−1951)


作家というのは、「生まれながらにして深刻な矛盾」を抱えて生まれた人間の宿命だという見方がある。
精神の平衡を得るために、表現行為に走るのだそうだ。

主人公の思い人、アリサは頭に思い描いた理想のために窮地に追いつめられて死んで行く。そして残されたジェロームは、「恋人が、頭の中でこしらえた自分という人間に、忠実に生きる。」

このテーマは、純粋な夢を持っていた若いころにはやるせなく、どこまでもロマンティックに感じられ、プラトニックということの意味を少しわかったような気がした。が、現実社会でこれを貫くということは、えてして正常な社会人とは見なされないのだろう。これこそ、「生まれながらの深刻な矛盾」なのかもしれない。
ジィドが熱愛の末、結婚したマドレーヌ夫人との関係でも苦悩した点だったようだ。本人のみならず、回りの人をも巻き込む、それこそ「深刻な矛盾」である。
中学時代に読んだ時は、非常に宗教的な印象を受けたが、改めて思い起こすと、一種の狂気のようにも思える。この現実社会で生きているうちに、純粋さをなくしたのか、それとも、この感覚の方が正常なのか・・・



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