シーラという子   (1980年)

著者:トリイ・L・ヘイデン


書店で目に留まりながら、なんとなく人の不幸を興味半分で読む気になれず、手に取らなかった本だった。
思いがけず息子が読んでいて、彼の勧めで読み始めた。

児童虐待の被害者シーラが生まれ変わっていくようすを、長年障害児教育に携わってきた著者によって、記録されている本。たった6才で、過酷な人生を背負って特別クラスに入れられた少女、シーラ。
心を開いていく過程を読んでいくと、子どもが赤ちゃん時代から愛情を受けずに育つ恐ろしさに、お腹が冷える思いがする。

たった6才の子供にとって世の中全部が敵という、信じられない人生。その敵から必死に自分を守り、生きていくということは、自分のまわりに一定の縄張りを持っている動物が、侵入しようとするものには、それがなんであれ、威嚇し、抵抗し、噛み付くのとまったく同じ行動だ。
そのまま成長したら、このトリイのような人に会わなかったら、人生を棒に振ることだろう。

実際、そんな子供の方が圧倒的に多いに違いない。おさない時期の経験が、どんなに深い傷を残すかということを改めて考えさせられる。トリイのような先生に巡り合えた子供は幸せだが、世の中には傷を負ったまま成人して、意識的か無意識かは別として、社会を相手に復讐している例も多いだろう。
それも現代の犯罪の一部を占めているという気がする。
児童虐待の加害者自身も、何らかの心理的脅迫を受けているからこそそんな行動でるのだろうし、問題は深刻なのだろう。

シーラは幸運にも、トリイの指導の下で子どもらしい行動を取れるようになるので、読んでいてほっとするが・・・

シーラの後日談は、「タイガーと呼ばれた子」に書かれている。



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