・・・南瓜流東西食物談義・・・ |
大阪から鎌倉へ転居して来て18年余りになる。(うわっ、もうそんなに・・・) 越してきて、一番大きく変わったのは、言葉だ。 関西弁(=大阪弁)はどうしようもなく身に染み付いているので、消しようがない。 しかし、かぼちゃの順応性のおかげで、いまや、「なまりがないね。関西出身とは思えない。」などという、甘いお世辞を聞くようになった! でも、それは、普段よく使う言葉を使っているときだけ。たまにしか使わない言葉だと、つい身に染み付いたアクセントや言葉使いになってしまう。つまり、まわりの話し方にただ流されているだけなのだ。 方言がらみでおもしろい話は尽きないが、今回は食べもの編を披露しよう・・・ もちろん、関西弁といってもいろいろあるので、かぼちゃの育った地域での話。それも異論のあるかたは、かぼちゃの家庭で使っていた言葉と読み替えてください。 だいたい、食材の名前がちがうのには驚く。 同じ物なのにどうしてこうも呼び名がちがうのか・・・ 魚屋で見た開き・・・どこやらでお目にかかった顔だと思いながら、どうしても思い出せない。「えぼ鯛」などというのは関西にはない。まして、「えぼ鯛の開き」なんてものは存在しないのに、どうして知っているような気がするのか・・・ ずいぶん経ってから、それも何年もたってから、やっと気付いた。あれは、「うおぜ」なのだ。「うおぜ」は関西では、生で売っている。食べ方も、付け焼きがおいしいのだ。 ちなみに、「きんめ鯛」というのは、関西ではそもそもどんな名前でも存在しない。最初、見たときは金魚の親分みたいで、気持ちが悪く、あのでっかい目玉ににらまれて食べる気がしなかった。2,3年経ってから勇気を出して買ってみて、おいしいと知り、それからはファンになったが・・・ 「わかし」「いなだ」「わらさ」というのも、聞いたことのない名前だった。ぶりの子供なら「はまち」、よりちいさいのは「つばす」だ。 息子に「今晩のおかずは何?」と聞かれ、「鮭(さけ)を焼こうか・・・」と言うと、関東弁に染まった(!)息子に、「しゃけだろう?」と言われたことがあった m(- -;)m 野菜の名前にもなかなか慣れなかった。
「南瓜」は「かぼちゃ」と読み、「なんきん」とは読めません。 大体、関西には太い葱はなくて、「白ネギ」とか「東京ネギ」といったものだ。そして、関東には、「青ネギ」がない。うどんやそばの薬味に使うのは「青ネギ」なので、困った経験がある。最近は「万能ネギ」などと言うわけのわからない名前のネギが出てきたが・・・ それに、「京菜」とは、「水菜」のことだそうだが、関西から運んだものはいいとして、こちらで取れたものは、決して「水菜」ではない。水菜というのは、しゃきしゃきした食感の茎がほとんどで、葉は細く、薄い緑色で、やわらかい。試しに京菜を買ってみたら、口が切れそうに固い葉で使えなかった。 人参と言えば、真っ赤でおいしそうな「金時人参」を思う。大量に売っている薄い色の人参は、「西洋人参」だ。 こちらでは、お正月前の一時期だけ、一般の市場に出回る「京人参」がそれだ。 肉類でいえば、一番違うのは、「かしわ」だろう。鶏肉のことだ。 そして、関西で「肉」といえば、「牛肉」と相場が決まっている。 豚肉は「ぶた」。 また「ひき肉」のことは、「ミンチ」という。 関西に居たころ、関東から越してきた友人が、こんな笑い話をしていた。 「子供にお金を持たせてお使いに出した。カレーを作るからカレー肉を買ってくるようにと。子供が半べソで帰ってきたので、訳を聞くと、カレー肉は高くてお金が足りなかった、という。おかしいと思ったら、子供の買って来たカレー肉は牛肉だった。」というのだ。 これは関西では当然のことだ。誰が買おうとカレー肉は牛肉。 豚肉で作るなら、ぶたの厚切りかブロック、または酢豚用に切ったものを買わなくてはいけない。 また、ぜんざい論争というのがある。 「ぜんざい」とはなんぞや! 「ぜんざい」は、関西では、粒餡をゆるめたものに餅を入れたもの。 「亀山」をいうのを出している店もある。これは、粟餅などに粒餡をそのまま乗せた濃厚なもの。 しかし、関東でぜんざいを食べようとしたら、ちょっと頭が変になりそうだ。 粒餡をのばしたものにお餅を入れたのが、「田舎汁粉」。 こし餡をのばしたものにお餅を入れたのが、「御前汁粉」。 だそうだ。 どうして、粒餡入りのものが「汁粉」なのか、まったく合点がいかない(^ ^;) とにかく、関西では、「あんこ」といえば「粒餡」に決まっていると言っても過言ではない。 おまんじゅうでも、粒餡が好まれる。漉し餡のほうが上品という向きもあるが、味でいうなら、絶対に粒餡。羊羹でも粒の入っているほうがいい。 ちなみに、小豆は体にとてもいいそうで、和菓子を食べるほうが、ケーキを食べるよりよほどヘルシーだそうだ。 取りを飾るのは「きつね」と「たぬき」論争・・・ なんといっても、関東へ越してきて、腰を抜かしそうにびっくりしたのは、「きつねそば」に「たぬきうどん」だ! 世の中にそんなわけのわからないものがあるとは、想像だにしなかった!!! 「きつね」はあくまでもうどんのこと、「たぬき」は何が何でもそばのことだ! ここに大きな思い違いがある。関東では、 という方程式ができているようだ。だから、うす揚げが入っていると、うどんだろうがそばだろうが、「きつね」と呼ぶという救いようのない間違いを犯しているのだ。しかも、念には念を入れて「きつねうどん」、「きつねそば」なる珍メニューができあがっているのだ。 では、「たぬき」ってなんなんだろう? よく観察していると、どうも、また変な思い違いがあるようだ。 が、もうひとつの間違い方程式。 つまり、揚げかすが入っているのは、うどんだろうが、そばだろうが「たぬき」ということになるらしい。 正しい方程式は、 「たぬき」=「うす揚げの入っているそば」 揚げかすの入ったうどんはメニューにも載らない食べもので、「すうどん」という。 「すうどん」には、店によって、多少の変化はあろうが、たいていは、揚げかすととろろ昆布とネギが乗っかっている。そして、値段は非常に安い。わざわざご大層な名前を付けて、メニューに載せるほどのものでもないわけだ。 というわけで、お蕎麦屋さんに入って、メニューに、「きつねそば」と「たぬきうどん」という言葉を見たときは、ほんとうに椅子から転げ落ちそうになったのである! 関西へお出かけのときは、 くれぐれも「きつねそば」や「たぬきうどん」なんて注文をしないように! どつきまわされても、かぼちゃは知りません m(_ _)m |
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