16-17 March, 2001 |
2001年2月16日、熊谷から新幹線に乗る。 熊谷では快晴の春の陽射しがさんさんと照っていた。風はまだ冷たいが、まさに春の兆しの感じられるいいお天気だった。 窓際に座っても道中の半分はトンネル。 まさしく、「トンネルを越えると雪国だった・・・」 30分あまりで窓の外はまっしろ。越後湯沢は2メートルの雪に埋もれていた。 上越線に乗り換えるプラットフォームでは吹雪が舞っている。 六日町まではJR。その先は「ほくほく線」。JRの上越線、飯山線、北陸線を横に結ぶ線で、向町から犀潟まで通っている。もちろん始めて乗る。 越後湯沢の駅でふと窓の外に目をやると、通路を覆い隠す雪の下の線路には、雪がない。よくみると散水栓がくるくる回りながら水を噴射している。こんな装置で線路を守っているんだ。 電車が進むにつれ、雪の高さはどんどん増してくる。ほとんど色のない世界。吹雪いているので空も白っぽい灰色。 積雪からまもるためか、途中の駅はトンネルの中にあった。 下車駅は「まつだい」だが、「十日町」で途中下車する。 途中下車前途無効だと旅行社で言われた切符だったが、駅員さんはいいですよと改札を通してくれた。 外は雪でどうしようかと思っていると、駅構内に貸し傘がおいてある。ありがたくお借りしていく。 キャラバンを履いて、厚い手袋と防寒着で武装しているが、こんな寒さは初めてだ。 駅から一歩出ると凍った雪に足を取られそうになる。足元ばかり見て歩く。 メインストリートは、雪像作成のために集められた雪以外は、除雪してあるので、歩くのに困らない。 横丁を見ると、両側に山のような雪がおおいかぶさっている。家と家の隙間には屋根にも届きそうな雪が・・・ メインストリートとそれにつながる横道には、面白い仕掛けがしてあって雪を溶かしている。 ところどころに直径5,6センチの金具が埋まっていて、そこから水がちょろちょろと流れ出ている。 横道はほとんど緩やかな坂道なので、雪が溶けて下水道に流れ込んでいく。 雪祭りのために、通りの商店の人たちが店の前に思い思いの雪像を作っている。 ちょっとした空き地は大きな雪像の作品展示場だ。町の人たちの力作が並んでいる。 昼は名物の「へぎそば」を食べ、雪を楽しみながら、メインストリートを歩き回る。 十日町のそばは、つなぎに布を織るときに使う布海苔(ふのり)を用いるためにこしが強くのど越しがいいのだそうだ(宣伝文による)。 そして、「へぎ」という木の陽気にそばを一口ずつ(かなり大きな一口だが)並べて数人で食べるのが「へぎそば」である。 なかなか素朴でおいしかった。 横道にそれて、「十日町きもの歴史館」にはいる。 十日町は、江戸時代は越後縮の生産地で有名で、高級夏織物として珍重されたそうだ。 その後、幕末期に絹織物に転進し、絹縮の産地になったそうだ。 そのころの着物が展示してあったが、薄く透けて見るからに涼しそうな優美なものだ。 それから明治期に明石ちぢみで名をはせる。 大正から昭和にかけては、秋冬物にも進出し、戦後はお召し、小絣、縫い取りちりめん、マジョリカお召しとつづき、最近は友禅技法にも取り組んでいるそうだ。 着物は、昔の柄のほうがなんとも大胆でモダンなものが多い。現代人には着こなせないような斬新な柄の着物が、江戸時代や明治、大正のものと聞いてびっくり。 館内を説明してくださった女性係員は、白がすりの着物をはんなりと着こなし、しゃんと背筋を伸ばしたおばさま。話していると、今度の誕生日で80歳になる、と言われ、またまたびっくり。 十日町では、小学校6年生が一年かけて、着物の勉強をするそうだ。十日町の着物の歴史、製造過程をならって、最後は着付けを覚えるのだという。小学生が、母親の着付けをするんですよ、と笑っておられた。 雪がひどくなってきて、寒さも増してきたので、今日の宿舎のある「まつだい」に向かう。 駅へ行く途中のお寺は吹雪の中に沈んでいた。 「まつだい」は電車で一駅だが、10分あまりの間はほとんどトンネルばかり。やっと抜け出たと思うと、雪はもっと深くなっていた。駅前の広場は除雪してあるが、道路わきには雪の壁が4メートル近くまでそそりたっている。 宿のお迎えバスに乗せてもらう。 バスの走る道路は、路面と両側の壁が全部雪で、真っ白。 車が走っても積もった雪はまったく汚れない。このきれいな道を走ること20分あまり。 今夜の宿は、松之山温泉郷の「ひなの宿 千歳」。 広いお座敷の部屋に通され、大きなおこたに入って体が溶けてゆく気分。 塩化ナトリウム系の温泉にゆっくり浸かって、おいしいお夕食をいただくと、疲れも溶け出すようだ。 食事はべつのお部屋でいただくのだが、これが食堂ではなくて、和風の個室になっている。 ご馳走が山のように出て食べきれず、ご飯はもう食べられないから、あとでおにぎりにしてください、と頼んで部屋に帰る。 しばらくすると、おにぎりと一緒にデザートも添えたお盆が届けられた。 ぽかぽかになったところに冷たいデザートと、口に入れるとほろりと崩れるおにぎりがとてもおいしかった。 |
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